松戸市   大規模災害 2つのハザードマップを重ねて確認

松戸市   大規模災害 2つのハザードマップを重ねて確認

 

西日本豪雨で多くの地域が冠水した岡山県倉敷市真備町地区。洪水ハザードマップが予測していた浸水区域は、今回の浸水区域とおおむね同じでした。日ごろからハザードマップを眺めている人はまれでしょうが、今回の豪雨災害を教訓に改めてをチェックしたいと思います。

松戸市 洪水ハザードマップより
■まず「わがまちハザードマップ」から
ハザードマップをチェックするなら「国土交通省ハザードマップポータルサイト」()がお勧めです。トップページには「わがまちハザードマップ」と「重ねるハザードマップ」の2つが表示されます。このうち、まず各地域のハザードマップのリンク窓口となっている「わがまちハザードマップ」を見てみましょう。
わがまちハザードマップでは「洪水」「内水(高台での浸水)」「高潮」「津波」「土砂災害」などの各ハザードマップに加え、「震度被害」「地盤被害」「建物被害」などの地震防災・危険度マップのうち、その地域でどのマップが公表されているかがひと目でわかるようになっています。
筆者が住んでいる千葉県松戸市では、洪水ハザードマップ、震度被害マップ、建物被害マップの3つが公表されていました。
松戸駅周辺の洪水ハザードマップをみると、南北を走るJR常磐線の西側に浸水想定区域が大きく広がり、江戸川が流れる西に行けば行くほど青色が濃く、想定される浸水が深くなることがわかります。松戸駅の東側は台地が広がっているため線路の東側は浸水は浅めで、さらにその東側は浸水想定区域になっていません。
地域のハザードマップなので、避難場所(緑色の丸に人が踏み込むマーク)や浸水リスクの危険性が高い地下売り場(赤い丸)、アンダーパス(鉄道やほかの道路の下をくぐって通る道。水色の矢印)、歩道橋(緑色の矢印)などの情報も掲載されており、避難するときの経路を考える材料になります。

ほかの地域のハザードマップも災害リスクだけでなく、災害発生時の避難経路など「どのように命を守るのか」といったことが考えられるように構成されているので、まずはわがまちハザードマップで自分の住む町や、これから住む町をチェックしましょう。

 

■自治体のハザードマップで見えないリスク
次に「重ねるハザードマップ」を見てみましょう。重ねるハザードマップは洪水・土砂災害・津波の災害リスク情報、道路防災情報、土地の特徴・成り立ちなどを地図や写真(1945年~2007年)に自由に重ねて表示できる優れものです。
先ほどと同じように、松戸駅周辺の地図に「洪水浸水想定区域(計画規模)」と「急傾斜地の崩壊(警戒区域と特別警戒区域)」を表示してみました。

こうしてみると、浸水エリアは松戸市が公表している洪水ハザードマップとほぼ同じだとわかります。一方、先ほどの同市のハザードマップには急傾斜地(薄茶色で着色されたエリア)の表示はあるものの、崩壊リスクがある部分(オレンジと黄色で着色されたエリア)の表示がなかったことに気付きます。

国土交通省 重ねるハザードマップより
■「洪水浸水想定区域」も念のためチェック
次に洪水浸水想定区域(最大規模)をクリックしてみると、驚くことに松戸市のハザードマップでは浸水想定区域になかった場所も浸水リスクがあることがわかります。線路の東側にも低い土地が広がっているエリアがあり、その区域は浸水の可能性があることがわかります。

このように、重ねるハザードマップは多くの災害リスクの情報を提供しているのです。それ以外にも1945年ころの航空写真や明治期の低湿地、土地条件図なども重ねて調べることができるので、その土地の過去の歴史や成り立ちもわかります。これらは災害リスクに対応した建物を検討する際にも役立ちます。
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国土交通省 重ねるハザードマップより
■日ごろから災害対策を考えておく
自分の住んでいる町やこれから転居を考えている町について、様々な情報を重ねて調べるのが面倒という人もいると思います。そんなとき、重ねるハザードマップの右上にある「危」のマークをクリックし、地図上で目的の場所を指定してみてください。
次の地図のように、調べたい地点について重ねるハザードマップが持つ災害リスクの情報や土地の成り立ちを一度に表示してくれます。

しかし、このような点としてのリスクだけでなく、住まいの周辺も含めた災害リスクを知ったうえで、どのような対策をすべきかを日ごろから考えておくことが重要だと筆者は考えます。
例えば「建物を建てるなら基礎を高くする」「保険は水災対応の商品を選ぶ」「避難経路を家族で話し合う」など、考えておくべきことは数多くあると思います。この機会にわがまちハザードマップと重ねるハザードマップをチェックしてみましょう。
田中歩 1991年三菱信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)入行。企業不動産・相続不動産コンサルティングなどを切り口に不動産売買・活用・ファイナンスなどの業務に17年間従事。その後独立し、ライフシミュレーション付き住宅購入サポート、ホームインスペクション(住宅診断)付き住宅売買コンサルティング仲介などを提供。2014年11月から個人向け不動産コンサルティング・ホームインスペクションなどのサービスを提供する「さくら事務所」に参画。